盧載鎭

ハリルホジッチ監督は、勝負師だった。W杯進出がかかる大事な一戦。オーストラリア戦に、代表経験の浅いMF井手口をスタメンで送り出した。サッカーを取材して20年以上の私には、理解できない起用法だった。ふと、最終予選初戦のUAE戦でMF大島を代表デビューさせて失敗したことが、オーバーラップした。しかし90分後、私の心配は杞憂に終わった。 これまで、ハリル采配は、自分の基準からは不可解なことが多かった。スピードがあって、スペースに切り込むことを得意とするFW原口をボランチで起用したことがある。調子の上がらないFW本田を使い続けた時期もある。今回のオーストラリア戦も、個人的にはそうだった。高さに絶対の自信を持つ相手に対し、空中戦に強いDF植田をベンチ入りメンバーから外した。 まだ指揮官の狙いが、はっきりとは分からない。やっているサッカーも、試合ごとに微妙に違っているように思える。2年半、間近で見てきたが、目指すサッカーが、自分の中では今ひとつ分からない。不思議な人だ。でも日本をW杯に導いてくれたわけだから、日本にとっては、恩人に違いない。 オーストラリア戦後、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「来年のW杯ロシア大会も指揮を執ってもらいたい」と話した。ハリルホジッチ監督とはあと1年、付き合っていくことになる。これから1年間で、ハリルの真実を深く探ることができるだろうか? サッカー担当記者として、自分の眼力を高める、充実した1年にしたい。 感謝の気持ちを込めて…。